推理よりも精神病に関する苛烈な表現が目立つ記憶に刻み込まれる一冊です。
「チャカポコチャカポコ」等の擬音が有名ですが物語構成そのものも衝撃的で、
読者の脳に何らかの爪痕を残すことに違いありません。
読んでいると時間がワープするぐらい熱中しました。面白かったです。
とはいえ、夜勤の暇な時を見つけて読んでいたのですが読破するのに半年程かかってしまいました。
面白いと感じてからはあっという間でしたが。
裏表紙には「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」とか
おどろおどろしいことが書いてありますがその通りで、生半可な気持ちでは読み進められなかったです。
まだ一周しかしていない上に解説本も読んでいないので
考察に関しては何ともなのですが、
ひとつ驚いたのは時代の割に精神病に対しての造詣が深かったことですね。
夢野久作自身の研究も冴えていたのでしょうけど、
大正~昭和初期の日本は思ったよりも現代に近い部分があるんですね。
というか、現代人は太平洋戦争末期のイメージが強すぎるのでしょう。
人を無知の状態に封じ込める鎖を解き放ち真理を追い求める姿は、現代に足りないものに感じて惹かれます。
なので僕は近代~現代日本で言うなら大正~昭和初期時代と高度経済成長期が好きです。
話が逸れてしまいました。
作品に関してですが、一郎よりも正木博士の行動について深く考えさせられます。
最低二週はして、多くの人の論評を見つつ、自らも論考なんぞをしてようやく作品を評価出来る土壌に立てるのかなと思いました。
さらなるキチガイ地獄に苛まれること間違いなし!
それまでは、唯物科学に毒された愚者として今まで通り過ごそうかと思います。